金属素材の個性を浮かび上がらせる新手法。
水墨画にも似た深く豊かなグレートーンの
高耐食性メッキ鋼板仕上。
塗装と研磨の職人技による特注仕様を新たに規格化。
メッキ層への塗装と研磨の強弱を調整することによって、グレーの中に豊かな階調を表現します。均質な研磨模様とカラーバリエーションが特長の「ZCFC」とは異なり、金属の自然な風合いを活かしつつ狙い通りのグレートーンを浮かび上がらせる職人技。試作を繰り返し人気の特注仕様を規格化しました。
高耐食性メッキ鋼板の性能はそのまま。
フロント特許製法「FRONT CRAFT®」を用いた先行製品 「ZCFC」で培ってきた性能と品質を、このCRAFT N.もそのまま継承。屋外環境で充分な耐候性を長期間維持しますので、外装材・パネル・サッシなどの建築建材として幅広くご利用いただけます。
CRAFT N.とZCFCの違いについて。
従来の仕上であるZCFCと、そこからさらに金属本来の表情にこだわった新仕上のCRAFT N.には、二つの異なる特長があります。
研磨技術による魅せ方
ZCFCは職人の手によって丁寧に描き出された研磨模様による表情が魅力です。
それに対し、CRAFT N.は複雑な研磨を行うことによって、奥行きと深みを出した金属本来の表情が魅力です。
色調
ZCFCは研磨だけではなく、カラーをしっかりと入れることによって表情を作り出すため、カラーバリエーションが特長です。
それに対し、CRAFT N.は金属の表情を消さないように、グレートーンによって表情を作り出します。研磨模様とグレートーンが調和してできる水墨画のような味わい深い模様が特長です。
例えば左の写真のように、ZCFC (グレー) はどこも均一にグレーのカラーが入っていますが、CRAFT N. (Light) は研磨の濃淡だけでグレートーンを生み出しており、同じ色調でもまったく別の表情になっています。
CRAFT N.と溶融亜鉛メッキリン酸処理の違いについて。
CRAFT N.に類似した仕上として、溶融亜鉛メッキリン酸処理による仕上があげられます。溶融亜鉛メッキリン酸処理は高温で溶かした亜鉛の中に鋼材を浸すことで、金属の表面をメッキで覆ったうえでリン酸処理をかける仕上です。
どちらの仕上も似たような用途で使われることが多いですが、CRAFT N.にしかない魅力があります。
鋼材の厚み
溶融亜鉛メッキリン酸処理はドブづけが高温での処理になり、薄い鋼材がその熱に耐えきれず変形してしまう場合があります。そのため、厚さ1.6mmの鋼材は基本扱うことが出来ません。それに対し、CRAFT N. は1.6mmの鋼材でも使用することが可能です。
意匠性
溶融亜鉛メッキリン酸処理はスパングル(冷却する過程で亜鉛が結晶となった時にできる模様)が現れる時があります。これを意匠として好む人も多くいますが、この模様は必ず出る訳ではありません。
それに対し、CRAFT N.は模様を職人の手作業によって描き出しています。そのため、一つ一つの表情に個性を刻むことが出来ます。
濃厚な樹木の緑と湯煙の中に、鋼板の黒く光る生々しい金属の肌を対比させたい。そんなランドスケープデザインの方向性もあって、当初デザイナー様のオーダーは当社の耐候性鋼仕上でした。リン酸処理で表情をつくっていく耐候性鋼はそのイメージにぴったりでしたが、懸念材料として持ち上がったのは現場の環境です。湯河原温泉郷の中心、万葉公園に建設される「湯河原惣湯Books and Retreat」は、その名の通りの温泉施設。あたりに漂う硫黄成分は観光客には情緒でも、金属にとっては塩害や紫外線と同様に大きなリスクで、長期間晒されればいかに耐候性鋼でも仕上の表情が劣化してしまう恐れがありました。そこで代替策として選ばれたのが高耐食性メッキ鋼板仕上「CRAFT N.」です。Nはニュートラルの意味で彩度はなく、職人の研磨で描く水墨画のような深く豊かなグレートーンは、もやりの濃淡も手仕事で丁寧につけられるため機械的なパターンがなく万葉公園の緑にも自然に溶け込み、施工後はCRAFT N.を今回初めて用いたデザイナー様からも大変ご満足いただけました。環境要因を妥協の口実に、「美」と「質」の両立を諦めてはいけない。そんな教訓が得られた仕事になりました。