FRONT DESIGN TALK

格段に高い難易度に挑み、創り上げた色と形。
美しい曲線に包まれる憩いの空間。

FRONT DESIGN TALK

新青山ビル(青山ツイン)|Shin-Aoyama Building(aoyama twin)

ほとんどが曲面で構成されたパネルと手摺

1978年に竣工し、現在リノベーションが進められている新青山ビル(通称:青山ツイン)。
日当たりの良い交流スペースである中庭広場では、フロントの「CRAFT STAINLESS」が広範に渡って使用されています。
以前の中庭は欧州を思わせるシンメトリーな作りでしたが、リノベーション後は打って変わって大きく螺旋を描いたスロープと、それに合わせた階段やベンチ、植栽によりアシンメトリーながら大きなひとつの円を描くような景観に変わっています。

曲線をメインにした大胆で目を引くデザイン。設計、製作、取付どの作業も難易度が格段に高い工事でした。手摺・土留めパネル・笠木など多くのパーツにRがかかっており、スロープから植栽に繋がる手摺笠木は三次曲面になっています。設計はもちろんのこと、加工製作時には溶接を極力減らし、必要な部分では歪みを最小限に抑える工夫が必要です。一つ一つのパーツがきれいに出来上がっていて、且つそれらを組み合わせた納まりのアウトラインが揃っていることが見栄えの完成度、高級感に大きく影響します。全長が14mに及ぶ箇所では、最初が数㎜ずれるだけで末尾では数㎝ものずれが生じることもあるのです。特に曲面同士のコーナー部分の納まり形状(役物)には工事担当者も難儀しておりましたが、見事に作り上げました。出来上がっている状態を見ると、それがまるで自然な状態であるかのように思えてしまいますが、ほとんどが曲面で構成されたパネルと手摺を納めた職人の技術はかなり高度であると言えるでしょう。

「想像以上」の、ステンレス特注色

スロープ手摺、植栽の土留め、階段状のベンチと手摺は全てCRAFT STAINLESSの特注色。当初、ご担当者様のイメージでは本物の錆を出す耐候性鋼を使用する計画でした。しかし、生錆ゆえ錆が成熟していく間に流れ出てしまったり触れるものに付いて汚してしまったりといった懸念事項があるため、人が触れる手摺やベンチには適さない素材だという判断になりました。

そこで諦めるのではなく、イメージ図としてのパースもその風合いを活かして出来上がっていたことから、そのイメージを実現するために錆をモチーフにした新しい仕上を提案して生まれたのが今回の特注色です。

フロントの仕上は素材を選ばず製作でき、素材選びの自由度が高いことも重宝される一因です。耐候性鋼による錆と全く同じではないものの近しく、光が当たったときの透け感はむしろ錆を超える奥行きがある表情を作り上げ、ご担当者様からも「想像以上だ」とお褒めの言葉をいただきました。金属の持つ独特の高級感は残しつつ、周囲の草木と調和するアースカラーで、硬質さや重厚さよりも柔らかな雰囲気を強めています。

職人がこだわり抜いた、憩いの景色

手摺の一本一本、ねじやボルトに至るまで全て職人の手で丁寧に仕上されており、近くで見ても遠くから見ても単体での美しさと全体の調和を兼ね備えた仕上がりです。

植栽、ベンチ、B1階へ続く階段の周りを覆うパネルは手仕事だからこその斑感があり、それぞれに表情が異なります。一枚の中でも濃淡があり、それらが何枚も並ぶことで、広い面積を金属で覆いながらも圧迫感の無い景観を作り出しました。

旧中庭からそのまま残った素材と調和し、さらに昇華させることを目指した当工事。フロントのパネルを背もたれに腰掛け、円を描くそのデザインが示唆する通り和やかな団欒の場になることを願っています。

設計:株式会社 三菱地所設計
施工:株式会社 安藤・間

アクセス:
銀座線、半蔵門線、都営大江戸線「青山一丁目駅」 直結

参考資料