FRONT DESIGN TALK

時とともに移ろう自然錆のアートが
富山の四季を鮮やかに彩る。

富山新聞高岡会館 | Toyama Shinbun Takaoka Kaikan

富山新聞の創刊100年を機に計画されたこの富山新聞高岡会館は、日本を代表する建築家・谷口吉生氏が設計を手がけました。この施設のラウンジ東側の水庭には、自然錆の3メートルのパネルが水盤から聳え立つように並んでいます。谷口建築設計研究所の担当の方は、フロントの持つ耐候性鋼板と錆に対する知識と経験を信任してくださり、このパネルの製作にお声かけくださいました。

打ち合わせで錆について細かくご説明をしていく中で、「錆の出方」について1つの課題が挙げられました。通常、耐候性鋼板は施工した後に現場で錆を出すことが一般的です。しかし今回の場合、錆が出た状態で竣工を迎えることをご希望されていました。そこで、酸洗いで黒皮を落とした後、錆出し剤の「R Chemical」を塗布し熟錆させる、「Rusty R」というフロント独自の熟錆仕上をご提案いたしました。このRusty Rであれば、錆が美しく出た状態で竣工を迎えることができ、かつ錆の飛散や錆汁が流出といった耐候性鋼板の問題点を軽減することも可能となりす。

Rusty Rをご採用後には、2か月の熟錆期間にご担当の方に錆の出方を確認いただき、さらに、1枚ずつ表情の異なる錆パネルの並びの組み合わせに検証を重ねました。

また、今回は錆のはがれを考慮し、錆面には触れないようパネルの扱いには細心の注意が必要となり、1枚が横1.5メートル、縦3メートル、厚さ9ミリの重量パネルの取り付けには苦戦しました。そして「パネルの目地は必ず6ミリに」という難易度の高いこだわりにも柔軟に対応することで、錆の表情だけでなく納まりの面でも設計事務所の皆様にご納得いただき、雑誌「新建築」の表紙を飾る出来栄えとなりました。

こうして製作されたフロントの自然錆パネルは、経年による表情の変化で富山の四季折々の景色を彩り、心安らかなひと時を過ごすことのできる空間づくりに貢献していきます。

参考資料